【2018年12月】
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【2018年1月】
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【2018年12月】 《仙波清彦&カルガモーズ》
腰痛に悩まされた一年でした。JIROKICHIの仕事は、基本立ち仕事だし、屈んで、ビール樽や機材など重いものを持ち上げる機会も多いので、出来ない時は、他のス腰痛に悩まされた一年でした。JIROKICHIの仕事は、基本立ち仕事だし、屈んで、ビール樽や機材など重いものを持ち上げる機会も多いので、出来ない時は、他のスタッフに迷惑をかけ通しでした。腰が悪いと、つい行動も緩慢になりがちだし、家でもなんとなく動かないようになってしまいます。寝起きも辛いし、靴下を履くのも一苦労です。出かけていて、駅の階段を踏み外したときなどは激痛が走ったりします。 これはまずい……いよいよ本腰を入れてなんとかしようと、ネットで検索し、高円寺で評判の良い整骨院を探しはじめました。幸いすぐに近所に良いところが見つかり、矯正、針、マッサージなど、様々な方法で治療をしてもらったのですが、劇的に良くなったのは最初だけ。あとは一進一退。なかなか完治しません。針を打ってもらった翌日は調子良かったり、打たなくても調子良かったり、治療の翌日なのに辛かったり。腰痛の治療に、時間がかかるのはわかるのですが、お金もかかるし、通い続けても治るという確信が持てず、どうしようかと悩んでいました。すると、ある日、YouTubeで、腰痛に関する驚きの動画を見つけました。とある有名健康番組の録画だったのですが、参考になるかと思って、何気なく観ていたのです。番組で語られた情報によると、腰痛になる人は「◯◯が良い人だ」といいます。果て、なんだろうと思っていると、びっくり。腰痛になる人は「寝相」の良い人だというのです。え? と思って続けて番組を観ていると、納得。人は、仰向けで、ほとんど動かず寝ていると、内臓と内臓脂肪の重みがモロに腰を圧迫し続けるのだそうです。やがて、重みで腰の筋肉が酸欠状態になり、身体が危険を知らせる反応を起こします。それが炎症という形で出るというわけです。これが慢性的な腰痛の正体でした。寝返りを打たない人は身体が硬い人が多く、また、マットレスがやわらかすぎたりする人もいるとのこと。自分は、たしかに、昔から身体が硬いし、布団の乱れ具合を思うと、あまり寝返りを打たない方かもしれないと思い、動画を観た日、さっそく仰向けにならないようにと意識して寝てみました。寝返りを打てていたかどうかはわかりませんが、その日、目が覚めてびっくり。全然痛くないんです。しばらく、この、仰向けで寝ないという方法を試しつつ、身体を柔らかくするストレッチをちゃんとやって、自然と寝返りを打てるようにしたいと思っています。テレビやネットの情報などあてにできないと思っていましたが、こういうこともあるんですね。
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【2018年11月】 《Chuck Rainey》
少し前の話ですが、台風すごかったですね。今年は災害ばかりで、ニュースを見て気分が落ち込む日がずいぶん多かったように思います。先日の台風では、JIROKICHIに出演するミュージシャン御用達の立ち食いそばや「桂」さんが全壊してしまいました。ニュースで見てご存知の方もおられるかと思いますが、近所の私たちもとてもびっくりしました。「桂」さんはもう40年くらい営業しており、安くてうまいとファンも多いことから、心配の声がちらほら聞こえてきます。先日店主さんにお会いして状況をうかがったところ、なんとか年内には再開したいと言っておられました。以前、「桂」さんの「めかぶそば」が非常にうまいと、このコラムで取り上げたところ、読んでくれた方が食べにいってくれたらしく、それを聞いてなんだかうれしかった思い出もあります。少しでも再開のお役に立てるよう、募金を受け付けておりますので、もし余裕があれば何卒ご協力宜しくお願いします。
ところで今回、日本中を席巻した猛烈な台風24号は「チャーミー」という名だそうです。誰が名付けているかというと、日本を含む14カ国が加盟している台風委員会です。米国、カンボジアや北朝鮮、ベトナムなどが加盟していますが、各国が名前の候補を10個づつ提案・登録し、現在、全部で140の名前があるそうです。今回の台風「チャーミー」は、ベトナムがつけた名前で、花の名前だそうです。ちなみに、日本が登録した名前は、てんびん、やぎ、うさぎ、カジキ、かんむり、くじら、こぐま、コンパス、とかげ、はと。これらはすべて星座の名前だそうです。カジキ座とかコンパス座なんてあったんですね。もし年内に台風26号が発生すると、日本の順番がきて「うさぎ」になるそうです。台風「うさぎ」って、なんかかわいいですね。
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「スパゲティ・ポヴェレッロ」というパスタをご存じですか。「貧乏人のパスタ」と呼ばれいるそうです。イタリアのレストランでもメニューに載っていないそうです。 茹で上げたパスタに、ニンニクの香りづけをし、目玉焼きをぐちゃぐちゃにして混ぜ合わせ、たっぷりの黒胡椒、おろしたチーズで仕上げただけの、シンプルなパスタです。料理の不得意な独身男性が、ビールでも飲みながらちゃっちゃと作る感じでしょうか。日本で言えば、卵かけご飯的な。しかし、これがたまらないというんです。JIROKICHIの営業後、よく行くバーの常連さんに、本も出している元イタリアンのシェフがいるのですが、その方に教えてもらいました。話を聞いて、早く食べたく食べたくて、翌日、さっそく作って食べてみました。盛り付けると、見栄えは良くありませんが、マジうまい。いわゆるB級グルメの類だと思いますが、すごく美味しいんです。これはクセになります。毎日食っても飽きない味かもしれません。皆さんも是非一度作って食べてみてください。チーズと黒胡椒、オリーブオイルはたっぷり入れると抜群です。 ところで飲み屋で、食べ物の話はいけませんね。お腹なんか空いていないのに、もう、たまらなくなります。常連客の中には、妙に料理の描写が上手な人がいたりして、そうなるともう、頭の中はその映像でいっぱいになってしまいます。 小説なんかでもそうですね。例えば、池波正太郎の「剣客商売」など読んでいると、主人公が、奥方や腕ききの料理人に作ってもらう献立の描写が毎度出てきて、またこれがいかにも美味そう。たまらなくなって、実際に作ってみたこともあるほどです。インスタなどで上手に撮られた映像で観るより、話を聞いたり、文章で味わったりした方がお腹が空いてくるのはどうしてでしょうか。 料理ってすごいですよね。食材に調味料を使い、火加減や、水加減、微妙な塩梅などを計り、器や、盛り付けにもこだわったりする。食事という生きるために欠かせない生命活動に対し、文化的な、複雑な楽しみ方ができるのは人間だけです。人間に生まれてよかったなと、つくづく思う食欲の秋、秋の夜長でした。
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【2018年9月】 《久住昌之QUSDAMA 》
日本を代表するトロンボーン奏者、村田陽一さんにインタビューしました。
ジャズやクラシック、ポップスなどで幅広く活躍する、言わずと知れたトッププレイヤーですが、椎名林檎さんをはじめ、多くのアーティストにアレンジャーとしても信頼されている方です。 ところで、ジャズやクラシックを演奏するミュージシャンの多くは、両親の教育方針や、幼少の頃からピアノを習っているなど、ある程度のポテンシャルの高さがあるものですが、村田さんは、まったくそういう環境になかったそうです。たまたま入った吹奏楽部で、背が高いからという理由でトロンボーンをやることになりました。そのうち楽譜が読めるようになり、楽しくなって、やがて熱心になりました。楽譜の掲載された歌謡曲集を手に入れると、片っ端からメロディを吹いてみたそうです。中学生になると、もうプロになることを決め、そのための道筋を考えていたとか。 大学生になると、さっそくジャズメンとして活動をはじめました。同世代のジャズミュージシャンを集め、自分のバンドを結成。並行して、ホーンセクションの一員として参加していたロックバンドのメジャーデビューが決まるなど、順調に歩みました。ロックバンドでは、プロミュージシャンになることに反対するご両親を安心させるためという意識でテレビなどに出演していたとのことです。 村田さんの言葉で印象的だったのは、バンド活動、つまり自分の表現したいことをやる「場」についてでした。自分の音楽を作って発表することはせず、楽器一本でお金を稼ぐスタジオミュージシャンや、職人的なプロミュージシャンは、それはそれでいいけれど、自分はちがう、自分はやりたいことだけをやりたい。表現をしたい。その思いは、プロになって、依頼された数々の仕事をこなしながらも、一貫していたそうです。 職人ミュージシャンになると、依頼された仕事をこなすだけになります。自分の音楽を追求してみたくなって、いざバンドを組んでライブでもやろうかと思っても、もうできないのです。人脈を作っていないからメンバーを集められない、ライブハウスへの出演の仕方もわからない。つまり音楽の「場」の作り方がわからないのです。村田さんは、経済的事情などに流されることなく、ご自分の音楽を追求してきました。素晴らしい仲間をたくさん作り、常に生の「場」に自分を投げ入れていたんですね。そういう音楽に対する姿勢や経験が多くのアーティストに必要とされ、信頼されている理由の一つなのかもしれないと感じました。
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【2018年8月】 《鬼怒無月 》
冷房に頼って寝ると翌朝だるくって一日中しんどいけれど、冷房をつけないで我慢すると睡眠不足になってしんどいし、どうすりゃいいんだ、という感じです。今年は熱中症で倒れる人が続出し、こまめに水分を摂るようにと毎日のように喧伝されています。 ところで、わたしは少年の頃、野球をやっていたのですが、昔は練習中、水を飲むことは絶対許されませんでした。今考えると、すごいことです。真夏の炎天下、過酷な練習で、汗は乾き、身体は塩を吹きます。意識が朦朧とするときもあったし、ボールに飛びついて倒れ込んだりしたら、簡単には起き上がれないような感じでした。でも、不思議と熱中症になるやつなんていなかったし、調子を崩して練習を休むやつもいませんでした。ちなみに、最近は、水分の摂りすぎはやっぱり良くないということになっているそうです。いったいどっちが正しいのでしょうね。 今と昔のカラダの関する知識の違いを考えると、面白いですね。わたしたちのころは、転んで怪我をすると、赤チンやマキロンという消毒液を塗られました。ところが今では全く使われないそうです。昨今は消毒液は良くないということに決まっているのだそうです。自然に備わった、患部を修復するための人体の機能をかえって遅らせてしまうからだそうです。ですから、ガーゼなどを患部にあてることもしないそうです。で、今ではどうするかというと、患部の泥や砂などを軽く洗い流すだけなんだそうです。 野球の話に戻ると、昔は、うさぎ跳びという、手を後ろに組み、しゃがんだ姿勢でぴょんぴょん跳ねて前進するという過酷な練習法があったのですが、私たちが卒業し練習から解放された頃、危険な運動ということで禁止になりました。実は膝に負担をかけるヤバい運動なのだそうです。しかし、わたしたちは、山のてっぺんにある神社の石段をうさぎ飛びで登らされたり、グラウンドを何周もさせられたりしましたが、別に膝を壊すものもいませんでした。(みんな、手を抜くのがうまかったのかもしれません笑) とにかく、わたしたちのころは、根性でなにもかもやり抜くという時代で、無駄な練習でもなんでもやってましたが、わたしたちのより後の世代になると、そういう考えは次第に廃れ、だから子どもたちはひ弱になったなどと、少し前はいわれたものですが、昔のスポーツ選手より、今の選手の方が格段にレベルが高いことを考えると、やはり昔の考えというのは、間違っていたんですね。きっと。
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【2018年7月】 《峰さんと小島さん 》
安い酒を飲んで、悪酔いし、頭がズキズキ痛くなったという経験がある人は、きっと少なくないと思います。私も、若い頃、安いウイスキーを飲んで地獄のような悪酔いに苦しんだ記憶が多々あります。昨今のお酒は安い物でも品質がよく、味もいいので、悪酔いなどはしないことが多いのですが、例えば駅前の焼き鳥屋さんなどで、調子に乗って、安い酎ハイでも飲もうものなら、飲んでいる最中にもう頭が痛くなってきます。今は、一口飲めば、頭が痛くなるお酒を判断できるようになったので、滅多にそういう目にはあいませんが、やはり、安いお酒は安いというそれなりの理由があるようです。 しかし、安い値段でお酒を提供している飲み屋さんは、安いお酒を仕入れなければやっていけません。例えば、焼酎なら、甲類、乙類という分類があります。乙類の仕入れ値は、種類にもよりますが、甲類の倍以上しますので、それなりの値段で提供しなければ利益は出ません。 乙類はいわゆる本格焼酎というやつで、芋焼酎、麦焼酎など、原材料そのものの香りが残る、味わい深い焼酎です。単式蒸留といって、一度だけ蒸留してアルコールを取り出します。ですから原材料の風味が多分に残るというわけです。甲類は、連続蒸留式という製法で、主に廃糖蜜といって、サトウキビから砂糖を作り出す工程で残ったタール状の廃棄物(と言っても有害なものではありません。ラム酒、味の素などもこれらを原料にしています)を発酵させて造ります。発酵したアルコール分を熱し、何度も蒸留することで、純度の高いアルコールのみを取り出し、水で薄め、精製して製品にしています。ですから甲類の焼酎の場合、原材料はあまり関係ないのです。穀物や果実など糖質が含まれていればどんな原材料でも造れるそうです。 居酒屋さんなどで飲む安い酎ハイは、この甲類という焼酎を使います。一斗缶などで超安く仕入れて客に提供しています。何度も蒸留するので、無色透明になり、癖のない、割りものに適したスッキリとした味になります。甲類の方がカロリーもないし、悪酔いしなくて、好きだという人も多いようです。 しかし、この蒸留の過程に手を抜くと、メチルアルコールなどの不純物が残ってしまうことになります。味も香りも良くありません。そこで、添加物を使って味を調整することになります。この不純物や添加物が頭の痛くなる原因だとか。蒸留酒にしても醸造酒にしても、あまりにも安いお酒には、不純物や添加物が入っていると考えて良さそうです。しかし、焼酎についていえば、値段の安い甲類焼酎といっても、体内のアルコール分解は乙類や醸造酒よりも早いそうですから、二日酔い、悪酔いの本当は、単なる飲み過ぎということなのかもしれませんね。ちなみにジロキチの焼酎はすべて乙類です。甲類が苦手な方はご安心ください。
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くすんできた店の外観をキレイにしようと、スタッフ総出でペンキを塗りました。普段、地下の陽の当たらないところで仕事をしていますから、昼間の陽光や風が大変心地よく、楽しく作業できました。JIROKICHIは基本、なんでも自分たちで作ったり直したりするので、かなり慣れていますが、やはり、プロとは雲泥の差で、かなり時間がかかってしまいます。 夕方、ようやく作業を終えて、さあ、打ち上げ。大仕事の後に飲むビールが美味いことは言うまでもありません。 ところでビールって、いつから美味しいと感じるようになったのでしょう。父親があまりにも美味しそうに飲むので、少し口をつけてみたら、ひどく苦い……こんな経験のある方も多いかと思います。とにかくビールが美味しいと感じるようになったら大人なんだそうです。大人になると苦味の良さがわかるようになってきます。人間はストレスを受けると、苦味を感じる味覚のレセプターが鈍くなるそうで、そういう理由もあるそうです。 日本でビールが飲まれるようになったのは、明治時代ですが、ビールの歴史はすごく古いというのを知っていますか。石器時代まで遡るといいます。貯蔵していた麦が発芽してしまい、しかたなく粥にして食べたところ、甘くて美味しかったというのが最初のようです。文明が起こったころには、もう飲まれていました。古代エジプトのピラミッドを建設していた作業員たちの現場から、ビール製造所の跡地が発見され、製造の様子を描いた壁画や、製造方法を歌った讃美歌なども残っているそうです。古代エジプトではファラオから庶民まで一般的によく飲まれていました。酔っ払ってストレス発散、というだけではなく、栄養源としても重要だったようです。重い石を高く積み上げる作業は相当過酷だったかと思いますが、仕事の後の一杯はさぞ美味しかったことでしょう。こんな話を書いていたらビールが飲みたくなってきました。ちなみにJIROKICHIの生ビールはサッポロ黒ラベル。ビール通はサッポロが好きなんです。
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【2018年5月】 《冨田麗香&ザ・ローリングジプシーズ》
散歩するにはいい季節になって、喜ばしい限りです。ところで、桜の咲き始めのころ、ソメイヨシノの発祥の地である駒込を経由して、巣鴨のとげぬき地蔵に行ったのですが、巣鴨って最高ですね。巣鴨の地蔵通り商店街は、「お年寄りの原宿」などといわれていますが、たしかに年配の方が多く、昔ながらの商店街がそっくり残っていて、いい感じで賑わっていました。なんとなく時間がゆっくりと流れているような気がして、とても気分がいいのです。原宿でクレープを食べ歩きするみたいに、大学イモ、焼き鳥などを片手にのんびり歩いていると、ふと、シブいお茶屋さんを見つけました。入ってみると、店を任されているのはインド人の若者です。注文すると、彼が丁寧にお茶を点ててくれたわけですが、これがちゃんとしていて、非常に美味しい。いろいろ訊いてみると、静岡で、師匠についてお茶を本格的に学んだとのこと。日本に来た理由は、大学で経済学部に学ぶためだったのですが、お茶の魅力に取り憑かれてしまい、とうとう師匠から店を任されるようにまでなったのだそうです。 「日本は少子高齢化で、働き手がなくなってます。外国人をどんどん受け入れて経済成長を維持しなければならないでしょう」 日本人の心を私よりもわかっている上に、痛いところを突かれ、日本の抱える最大の問題について、意見までされてしまう始末です。まいったな、と思いながら、再び地蔵通りに復帰すると、今度はいい感じのタコ焼き屋さんを見つけました。店内は結構広く、お酒も飲めるようです。メニューを見ると、タコ焼きのほか、明石焼きや、おつまみなども充実しているようなので、思わず入ってしまいました。 びっくりしました。タコ焼きはもちろん、明石焼きも、出汁が効いていて非常に美味しいし、サービス満点。しかし、店員さんは全員インド人。よく見ると、タンドリーチキンまでメニューにあります。かつて、日本のインドと言われた高円寺ですが、私はなんとなく負けたような気になって高円寺に帰ってきました。
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【2018年4月】 《こまっちゃクレズマ》
「肉じゃが」が好きです。肉じゃがといえば、肉、じゃがいも、人参、玉ねぎ、が基本で、煮崩れしにくいとのことでしらたきを入れたり、別茹でのさやえんどうなどを添えたりする場合もあります。個人的に、肉じゃがに使う肉は豚バラが一番うまいと思っているのですが、大阪出身の人が「肉じゃがの肉は牛肉が普通だ」というのを聞いて大変びっくりしたのを思いだします。ところで肉じゃがは、和食だと考えられていますよね。まあ、日本でしか食されていない料理ですから、和食なんだとは思いますが、実はこの料理、明治時代に日本の料理人がビーフシチューを再現しようとした結果出来上がったものなのです。ヨーロッパ視察に行ったあるお偉いさんが、向こうで味わったビーフシチューの味が忘れられなく、知己の料理人に再現を頼みました。見たことも、食べて味わったこともない料理ですから、料理人の方は大変苦労したと思いますが、工夫に工夫を重ね、なんとかそれ風の料理を作りあげました。こうして誕生したのか「肉じゃが」です。ちなみに肉じゃがはお酒のつまみとしても最高です。 ところで、ハンバーグも大好きです。ハンバーグはハンブルグ・ステーキのことですから、ドイツのハンブルグで生まれた料理かと思いきや、実はモンゴル出身です。時代は遡って、チンギス・ハンのモンゴル帝国の時代です。モンゴル帝国はヨーロッパにまで影響力を及ばせ、ヨーロッパの人たちはモンゴル人をタルタル人と呼んで恐れたそうです。モンゴル人は、ビタミンを採るために馬肉などを生で食べました。しかし、馬肉はスジが多く、非常に硬いため、細かく刻んで食べていました。それが、後のタルタル・ステーキです。ヨーロッパにもたらされたタルタル・ステーキは、あるとき、鉄板で焼かれ、ドイツのハンブルグで評判になりました。こうしてハンバーグは生まれました。
ちなみにタルタル・ステーキは日本には伝わりませんでしたが、韓国には伝わりました。そうです、焼肉の定番メニューの一つ、ユッケです。ついでに、韓国といえばキムチ。キムチは唐辛子をたくさん入れて漬け込みますが、唐辛子は、実は日本から韓国に伝わったものです。豊臣秀吉が天下を取り、晩年、明(今の中国)を攻めたときのことです。秀吉の命令で朝鮮に渡った武士たちは寒さをしのぐ為、カイロの代わりに唐辛子を持って行きました。キムチの歴史は案外古くないんですね。食文化の歴史は調べてみると面白いものです。
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「仮想通貨」ってご存知でしょうか。ハッキングされて580億円分が大量流出した、などのニュースを見てなんとなく知っている方も多いと思います。しかし通貨っていうけど、お金なのか何なのかよくわからないという人のほうが多いのではないでしょうか。
「仮想通貨」は「暗号通貨」ともいわれ、インターネット上にデータとして存在する通貨です。つまり紙幣や硬貨など、手で触れることのできる通貨とは違い、まさに「仮想」の通貨です。 仮想通貨は何種類も存在しますが、「ビットコイン」が最も有名です。ビットコインはしばしば「金(ゴールド)」に例えられます。地球上で採掘されつくした「金」と性質がよく似ていて絶対量が定められています。投資家は、円やドルなど法定通貨で仮想通貨を買ってインターネット上に保有し、相場を見極め、売買しています。 ビットコインは現在、1BT=100万円くらいで取引されています。2010年に最初のビットコインが生まれたときは(金のように掘り出されたときは)1BT=0.006円だったそうですから、たった8年で、信じられない値上がりをしたわけです。ですから、早くから注目してビットコインを買っていた人はみんな億万長者になりました。それでにわかに注目を集めたわけです。 ビットコインは、国がお墨付きを与えた通貨でもないのに、なぜこれほど価値が上がったのでしょうか。ビットコインはいってしまえばアイドルの限定サイン付きCDみたいなものです。本気のファンであれば手に入れたいレアなものでしょうが、興味のない人にとってはゴミ同然です。ところがそのアイドルは、まだ眠っている魅力がたくさんあり、歌もうまい、演技もうまい、スター性も抜群だと知れ渡り、いずれ国民的エンタテイナーになるだろうと見込まれたわけです。それで希少価値が出て限定サイン付きCDの値段が定価より上がったので、売り手が現れ、買い手が生まれたというわけです。
ところでアイドルの限定サイン付きCDは、そのアイドル自体に大変魅力があるわけですから、とにかく価値があるとわかります。しかし、仮想通貨はなにがその「魅力」なのでしょうか。それは「ブロックチェーン」と呼ばれる新しい技術です。ブロックチェーンについて説明しだすと長くなるので割愛しますが、現在の社会の仕組みを根底から変えると言われている革新的なアイデアです。仮想通貨はブロックチェーンという技術によって運営されているため、将来、円やドルに変わる世界的な通貨となるかもしれないと期待されました。しかし、やはり、難しいようです。ブロックチェーン技術自体は、様々な公共サービスに応用される可能性を秘めた素晴らしいものですが、仮想通貨は今のところやっぱり「仮想」です。公共サービスに使えたり、世界共通の通貨として世界中で買い物できるようになったりしなければやがて消えていくことでしょう。アイドルもアイドルから脱皮できなければ、人気が衰え、消えていくのと一緒ですね。ㅤ
【2018年2月】 《有山岸》
昨今の電化製品や道具類は、すぐに壊れたりしてよく買い換えたりするものですが、昔の製品は、なんでもずいぶん長持ちするような気がします。JIROKICHIは相当昔から使い続けている機材や道具が多いのですが、一番驚くのは、ステージでミュージシャンのモニター用に使っているBOSEというスピーカーです。これは全然壊れません。なんと40年近くも使っています。他には、ギターアンプ「JC120」。これも非常に丈夫で、25年くらい前に中古で買って日々酷使しているのにも関わらず、あまり壊れることなく助かっています。エンジニアのワオさんが自作したDIという機材。これも全然壊れません。しかもいい音で、未だに現役で活躍しています。 YAMAHAの人がわざわざ見学に来たことがあるというドラムセット、YAMAHA/YD900Rも、ジャズドラマー村上寛さんに譲っていただいてからずっと40年以上使っています。このドラムセットは、今では手に入らない木材を使って製作された名器で、ドラマーの方々にファンも多く、毎日のように使われています。店の音に馴染んでいることもあり、買い換えるつもりは毛頭ありませんが、しかし壊れて使えなくなるようなことは当分なさそうです。その他、厨房のフライパンや、油鍋、小道具類などにも、40年以上使っているものがたくさんあります。古いし、別に買い換えてもいいのですが、なんとなく愛着があってそういう気にならないのです。 資本主義社会においては、モノはどんどん使い捨ててバンバン買い換える方が、お金がまわって、景気も良くなり、税収も上がって、みんなが豊かになる仕組みなのですが、そんな社会システムに抗って…… というわけではないのですが、修理して何十年も使っている機材や道具をなんとなく良いモノのように思って使い続けています。モノを粗末に扱うな、もったいない、まだ使えるから取っておけ、などと昔はよく言ったものですが、今は、断捨離などといって、まだ使えるものでも、まだ着れる服でも、どんどん捨てられる世の中です。豊かになってモノが溢れているのに、商品に新しい付加価値を無理やり与え、大量にモノを生産し続けなければ破綻してしまう社会ですから仕方がありません。かといって、資本主義から脱却し、不便だった時代に戻ることはできそうもありません。共産主義、社会主義的な考えを安易に述べる人もいますが、それがうまくいかないことは歴史が証明していますし、もっと極端に、例えば原始時代のような生活に身を置くことなど絶対に不可能でしょう。 しかし、どうしても、昔からずっと使っている古いモノには特別な「なにか」が宿って、新しいモノより優れた価値があるような気がしてしまうのです。きっとブルースなど古い音楽が好きなのも、そういう性分のせいなのかもしれませんね。
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【2018年1月】 《ハモニカクリームズ》
2018年。私が子供のころには想像もできなかった未来です。社会は大きく変わりました。人々はコミュニケーションの手段をインターネット、スマホにシフトし、思想、音楽など、文化の発展も頭打ちになったように見えます。今後、近未来においては、人工知能、アンドロイド、ロボットなど新しい技術の一般化によって社会はさらに大変革することでしょう。一人一台ロボットを所有する、SFのような世界が本当に実現するそうです。そうなれば人々はもう他人とは関わらなくなります。すでに若い人たちは恋愛さえも敬遠する傾向だそうですから、例えば、バンドなど面倒な人間関係を必要とする集まりはもうなくなってしまうのかもしれません。 キーボーディストの加藤エレナさんにインタビューしたとき、JIROKICHIのオープン当初から出演していただいているようなレジェンド的ベテランの方々と共演する際の話になりました。昔のバンドマンたちはとにかく人間関係の密度が濃い時代を生きてきたのです。理由の一つに当時の情報の少なさがあります。今のようにネットはありません。バンドをやろうとなれば、レコードを持っている人など情報を多く持つ人と友だちにならなければならないし、楽器を手に入れて楽曲のコピーをするにしても、演奏技術を教えてもらったり、逆に教えたり、朝まで酒を飲みながらああでもないこうでもないと音楽について議論したり、とにかく始終顔を付き合わせて過ごしたわけです。そうやってずっと一緒に過ごすうちにバンドごとの個性豊かな独特の雰囲気を作りだしていったわけです。 最近の若いバンドは……などとエラソーにいうつもりはありません。酒が飲めなくったっていいし、必要事項だけをメールでやりとりしていれば、効率だってはるかにいいし、演奏することにおいては問題ないはずです。もしかして将来、わざわざリハーサルスタジオに行って練習をしなくても、ネットを通じてそれぞれの自宅にいながら十分にリハができるようになるかもしれません。 面倒なコミュニケーションがいらなくなる時代。けれどそうなったら人間の演奏を聴いていてもどこかロボットの演奏を聴いているようで、ライブを聴く感動はなくなってしまうことでしょう。