結成10年! JIROKICHIでのマンスリーライブも10年続くblues.the-butcher-590123。バンド結成の経緯や、ホトケさんが影響を受けたギタリスト・・・・・・ニューアルバムに参加のうつみようこさんの存在も大きかったようです。進化を続けるb.t.bにこれからも要注目です!

-blues.the-butcher-590213 10周年おめでとうございます。もう10年……早いですね。ホトケさんのキャリアの中でもバンドとしては一番長いですよね。

いちばん長くなったね。ウエストロード(塩次伸二g 山岸潤史g 小堀正b 松本照夫dr)からはじまって、ブルー・ヘブン(吾妻光良g 小出斉g チャールズ清水pf など)やって、クレイジー・ブキ(佐山雅弘pf ロミー木下b など)とか。それからtRICK BAG(森園勝敏g 小島良 喜pf 大西真b 鶴谷智生dr)。tRICK BAGのとき消耗してバンドはもうしんどいな……と思ったんだけどね。

-b.t.b結成の経緯について

始まりは……浅野くん(浅野祥之/ギタリスト。愛称はブッチャー。2007年に逝去)に「いっしょにブルーズやってくれませんか」と言われたのね。それで彼とデュオを始めた。 それで二人でツアーしてたら、大阪で沼澤くんがたまたま他のライブで近くにいて、俺らを観に来たの。そこでその店にドラムがあったので、「叩いてよ」になってベースレスで三人でやってみたらすごく面白かった。新鮮だった。ベースの低音がないからギターで音量を上げて爆音になって俺がガッガッガってリズム出して、ハウンド・ドッグ・テイラーみたいな感じになった。そこから沼澤くんも一緒にやろうみたいな感じになって。でもセッションじゃなくてバンドとしてちゃんとやりたいとなってそれが「The Blues Power」(永井ホトケ 隆vo,g 浅野ブッチャー祥之g 沼澤尚dr)になった。

浅野くんとの出会いは、ジロキチで房之助(近藤房之助)のバンドにゲスト出演したとき 。(浅野祥之は当時、近藤房之助バンドのギタリストだった)彼はスタジオ・ミュージシャ ンだったし、なんとなくフュージョン系ギタリスト的なイメージを持っていて最初はあまり話さなかったんだ。でも、何度も顔を合わすうちに彼が話してくるようになって……実はブルーズが好きなんだと。

それから少し経ってブルーズをもっとやりたいから一緒にって彼が誘ってくれて。そういえば大村憲司さんにも亡くなる前にブルーズをやりたいからと声をかけてもらった。でも亡くなって実現しなかった。長年、ギターを弾いてると思うんじゃないのかな……ブルーズを一度しっかりやっておきたいって。

で、The Blues Power を二年くらいやって……浅野くんが亡くなってしまってね。彼がいちばんやりたくて出来たバンドだったのにその張本人がいなくなっちゃったから……。僕はかなりやる気が失せてしまった。でも、沼澤くんが連絡をくれてね。「このまま終わっちゃうんですか」と。以前、ベースの中條くんが遊びに来て、The Blues Power に加わって弾いてくれたことがあって「中條くんはけっこうR&Bとかブルーズとか好きですよ」とかね。それで中條くん入れてという話しになったんだけど、俺はギターソロは弾けないよって(笑) ギターソロは浅野くんの担当だったし。そしたら「ハーモニカのコテツくんにソロを吹いてもらって……」となっていってそれで今のメンバー(b.t.b)になった。

もともと俺はギター弾いてなかったでしょ。最初はギターを持ってステージに出て行くってこと自体がプレッシャーなのにソロとか言われても、えー、みたいな。家では歌の練習するのにギターは弾いていたけど、ギターソロの練習はしないからね。浅野くんやシンちゃん(塩次伸二)、山岸(山岸潤史)の演奏が頭に残ってるから自分が弾くと、「こんなんじゃないよな」になる。自分はブルーズが凄くうまいギタリストと一緒にやって来たんだなって改めて思った。もっと教えてもらえばよかった(笑)
ギターの音色はシンちゃんが好きだった。それもちゃんと聞いておけばよかったな……。 アンプの調節とかね。あんなに早く死ぬなんて(2008年に逝去)思ってなかったから……。

-昔のファンの方は、ウエストロード・ブルースバンドのホトケさんというと、センターに立って、ギターを持たないで歌っているイメージが強いと思うんですけど、実はもうb.t.bで10年以上ギター弾いていて、ブルーズ・ギタリスト歴も長いじゃないですか。笑 先日、コテツさんとのデュオを聴いていて思いましたけど、ソロもバッキングもホトケ節という感じが随所に滲んでいて素晴らしいと思いました。ところでホトケさんは、ギタリストとしては誰に影響を受けていますか?

うーん、難しいなぁ……ギタリストが好きでブルーズが好きになったわけじゃなくて、ブルーズの歌を聴いて好きになったからね。B.B.キングだったり、マディー・ウォーターズだったり。あとはボビー・ブランドとかジュニア・パーカーとかギターを持たないで歌だけ歌うスタンダップ・シンガーも好きで……でも日本では残念なことにスタンダップ・シンガーは人気ないんだけどね。影響受けてるとは畏れ多くて言えないけど、強いて言うなら憧れはT.ボーン・ウォーカーかなぁ。

ロックをやっている頃からあんまり早くたくさん弾く人は好きじゃなかったんだよね。大昔、スティーヴ・ルカサーとジェフ・ベックとサンタナという組み合わせが日本に来て観に行ったんだけど、やっぱサンタナが好きだったね。

ロックでも早弾きを売りにしてる人とかいるじゃない? そういうのもなんだかわからない。ウィルコ・ジョンソンとかキースみたいに、ソロやってるんだかバッキングやってるんだか、コード弾きながらソロやってるような感じが好き。でもそれもすごく難しい。

-日本のブルーズファンの人って、特にホトケさんたちが登場した時期から、ブルーズというよりブルーズ・ギタリストが好きって流れありますよね。三大ギタリスト命。ギターマガジンが売れるみたいな。

エリック・クラプトンとかジミ・ヘンドリックスの流れでね。みんなギターばかり弾くことに夢中になって歌わない。ジミヘンの歌好きだけどね、俺は。シンちゃんにも山岸にも昔から歌えばいいのにってよく言ってた。シンちゃんは亡くなる前はけっこう歌っていたね。 よく歌詞を教えてくれってメールが来た(笑)

俺はギターを弾いて歌うっていうのがかっこいいと思ってる。むこうのブルーズギタリストってマット・マーフィーとかすごくギターうまいけど、歌はそんなに上手くないけど歌うじゃない。歌うの大好きなんだよね。別にB.B.キングみたいにうまくなくても、ブルーズは歌えるんですよ。ブルーズギターだけを弾いてる人に言いたいんだけど、歌のうまいことなんか期待されてないから……どんどん歌えばいい。ギターを弾いてリズムを切りながら歌うのが基本。それが出来るともっと楽しいと思う。ブルーズは、たとえば4オクターブ声が出るとか、そんなこと全然必要のない音楽だし。ライトニン・ホプキンスが何オクターブ声が出るか、なんて誰も考えたこともないでしょ(笑)ジョン・リー・フッカーもああいういい感じでも歌うじゃない。

だからみんな歌えばいい。

例えばいろんな店でやってるブルーズ・セッションって、やたらギターだけ弾きたい人が来るじゃない? で、ギターソロを延々と弾く(笑)そのくせ、バッキングはちゃんとやらなかったりする。そして歌わない。それがブルーズをつまらなくしてるように思う。その日初めてブルーズを聴く人がそのブルーズ・セッションの客席にいたとするじゃない。そしたらつまらなくて二度とブルーズ聴きに来ないよ。ギターのインスト曲もブルーズにはあるけど、インスト音楽じゃないからね。そこを履き違いされるとしんどい。やるなとは言わないけどね。とにかくまず歌えばいいのにと思う。キース・リチャーズのソロアルバムを聴いたってキース、別に歌がうまいってわけじゃないからね。でも彼しかこんな感じで歌えないていうのがあるよね。

-ギターの練習は?

毎日ギターを持つけど、練習するっていう感じが嫌い。練習ってそもそも学校にいたときの勉強みたいでしょ(笑)

家でギター弾いていろんな歌を歌ったりするのが好き。ボブ・ディランとかビートルズとか。ブルーズ以外の曲も歌う。でも、ギター持ったらまずガッガ、ガッガとブルーズのウォーキングベース弾くの。しかもいつもEで。とにかくガッガ、ガッガが好きなの。b.t.bでもガッガ、ガッガってやってるときがすごく楽しい。ギターソロを弾くよりもコテツくんがハーモニカ・ソロやってるバックでガッガ、ガッガって弾いてる方がね。こんな楽しいことないよなと(笑)沼澤くんや中條くんとリズムがカチっと合わさったとき、このまま永遠に終わらなきゃいいのにと思うほど気持ちがいい。ところがギターソロになると(笑)なかなか楽しめない。また同じフレーズ弾いてるな、とか(笑)まあブルーズマンてどの曲も同じフレーズを弾いてるんだけどね。つい「もっと上手くならないかなぁ」って。練習嫌いなくせにね(笑)

話は戻るけど、いま思ったけど一番影響受けたギタリストってシンちゃんとか山岸とか浅野くんかもしれないね。自分の歌う横でいつも弾いてくれていた人たち。

-でもガッガ、ガッガ(シャッフル)は意外と難しくて

日本のポピュラー・ミュージックにはシャッフルのリズムがないんだよね。沼澤くんが言っていたけど、ジェームズ・ギャドソンの家に行ったとき、まず最初にやらされたのがシャッフルだったって。アメリカの音楽は必ずシャッフル。でも日本のドラマーでちゃんとシャッフル出来る人は本当に少ない。だからブルーズのセッションでシャッフルやろうって言ってもドラムの人が出来ないから……。シャッフルもいろんな種類があって、それをちゃんと叩き分けることをちゃんとやろうと思うと、それはもう大変ですよ。

ブルーズのシャッフルは、バンドのメンバーと一緒になってちゃんとやろうと思わないと出来ない。今、俺はほとんどセッションはしなくなったけど、たまに呼ばれて行くとドラムの人がシャッフルを出来ないっていう時があって8ビートの曲に変えたりする。俺はレゲエとかサンバとかは出来ない。当たり前だよね。それぞれ奥深い音楽を「こんな感じ」でやるのは失礼だよね。例えば……ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの人たち、あのキューバのおじいちゃんたちのようにあんなふうにすぐに弾けるわけないよね。彼らは、何十年もそれだけをやって来ているからね。

だからあんまり多様なことをやらなくてもいいんじゃないかな。スタジオ・ミュージシャンとか、誰かのサポートのギタリストになるんだったら、いろいろ覚えなきゃならないこともあるだろうけど。でも、バンドを組んで、こういう音楽をやろうって思ったら、とりあえずそれだけ出来ればいいじゃない。多様なことをしなくても、バンドで曲を作ってくうちに、もっとバリエーションが欲しいなと思ったら必然的に他のテクニックも覚えなきゃならなくなるわけだから。だからオリジナルをやりながらカバーもやるといいと僕は思う。

-流行りの……新しい音楽は聴いたりしますか。

俺にとっては、古い音楽が新しいっていうかね。最近、チャック・ベリーを久しぶりに聴いて、新しい、すごいな、と思ったり。B.B.キングでもそうだけど、彼らの音楽を古いって思ったことがないんだよね。俺にしてみれば前に流行ったテクノっぽいものとか、ちょっと前の打ち込みの感じとかの方が、すごく古く感じる。でも人間が演奏している録音というのは、大昔のでも、ぜんぜん古いって思わない。ボブ・ディランの歌詞は今でも全然通用するし。ディランがそう歌ったころから社会は変わってない。ブルーズも同じで古くならない。

テクノといえばテクノが流行ったころ、一度音楽をやめようと思ったことがあった。時代に取り残されたような気持ちになって……もうやらなくてもいいかなって。でもそう思っていた頃にマディー・ウォーターズが来日して、サザンソウルのオーティス・クレイやO.V.ライトも日本に来たんだよね(1979年)。バンドがなくなって他の仕事もしてる頃で、ちょっとしんどかったかな。だけど、自分の好きなそういう外タレのライブを観にいったら俺の好きな音楽に間違いはないと確信出来てね。

O.V.ライトを聴いたときは、公演が終わったら席から立てなくて……。客電が点いてみんな帰るんだけど、あまりにも素晴らしくて立てなくて。もう、泣いちゃってるし。渋谷から下北沢まで電車に乗って帰る気がしなくてさ、夜の道を歩いて帰った。マディーもオーティス・クレイも、もちろんよかったけど、O.V.はなんかすごいの聴いちゃったなと。今まで音楽をいっぱい聴いてきたけど心底やられた感じだった。それがいまも自分の心の支えになっているというか。その時はまた少しずつ音楽やればいいのかな、みたいに思った。

外タレだけではなくて友達がやってる演奏も聴きにいくよ。好きな有山くん(有山じゅんじ)とか時間があれば聴きに行く。やっていることが違うけど、新曲作っているんだなぁ、あぁ俺も頑張ろうって。鮎川くん(シーナ&ロケッツの鮎川誠)とか、同世代のバンドマンが未だに健在でバリバリやっているというのが励みになる。房之助もそうだよね。金子マリちゃんも。地方に行ってチラシとかポスターを見ると、あぁ頑張ってるなぁと。そいういう人たちが同年代にいるっていうのは大事だとよね。年を経ると少なくなってきちゃうでしょ、やっぱり。

-8作目のアルバム『ロッキン・アンド・ローリン』は、うつみようこさんを迎えて、テキサスブルーズの真髄を追及する、ということですが。

うつみようこさんは昔から名前は知ってた。メスカリン・ドライブ。ソウル・フラワー・ ユニオンも。あるとき、沼澤くんが「うつみようこさんて知ってますか」って。パンクのあの人だよね? みたいな。で、初めて歌を聴いたときに、あ、この人……いい! ってすぐ思った。

今回レコーディングしているときもギターを弾きながら、うつみさんの歌がすごくよくて気持ちが入ってしまった。逸材ですよ。英語はめちゃ堪能だし素晴らしい。ブルーズを歌ってる女の子は是非聴きに来た方がいいんじゃないって。遠慮なく目一杯行ってやり尽くす感じはやっぱりパンクだね。

前からパンクとブルーズには共通点があるって思っていた。表現の仕方は違うんだけど、 根っこにあるものが、気持ちが……ハウンド・ドッグ・テイラーとか北ミシシッピーのブルーズに共通してるよね。プリミティブなところとか吐き出される気持ちに似てるものがある。うつみさんはパンク的な感覚とブルーズの感じがミックスされている珍しいシンガーですよ。

-パンクの人たちはブルーズにすごく親近感持っていますね。

甲本ヒロトくんもブルーズが好きみたいでよく外タレのコンサート会場で会うよね。

昔、バディ・ガイのライブ盤聴いた時、気持ちのテンションが異常に高くてチューニングなんか合ってないんだけど、そんなの関係なく歌と演奏の気持ちの高まりがすごくって。房之助と「このバディにはかなわないな」(笑)ある種パンク的なものを感じたんだ。うつみさんの歌を最初に聴いたときも同じようなテイストを感じたよね。

今回うつみさんとのレコーディングはやれてほんとによかったよ。そのうち、彼女がフルでブルーズを歌うアルバムを作らないかなと思ってます。完全なブルーズ・アルバムを。

-レコーディングは一発録りにこだわっているんですか?

こだわってるっていうか、何回録っても一緒なんだよね(笑)ライブで出来ないようなことは「しない」っていうのが基本だから。音を作り込むようなバンドだったら別だけど、そういうバンドじゃないから一発録り。誰かがしくじったらまた頭からやりなおす。

-オーバーダビングはないんですね。

一切やってない、アルバムすべて。だから俺のちょい間違いはある(笑)

-昔のブルーズのアルバムなんか、どう聴いても間違ってる、ていうの、ありますもんね(笑)

ある、たくさんある(笑)ライトニン・ホプキンスなんかブルーズは定型12小節なのに13小節半。とか4小節でコードチェンチジしないで、思いつきで急にコードチェンジしたりしておもしろい(笑)

-b.t.bが10年続いたという感慨みたいなものはありますか。

10年やって来たけど、あっという間だね。アルバム作ってツアーに出るというパターンをひたすら毎年やり続けてきた感じ。10年も経てば音楽だけじゃなくて日々いろいろあるじゃない。そのたびに人生もちょっと変わるじゃない。嫌なこともいいこともあるけど、音楽は、ブルーズは、いろんな気持ちを抱えるその日常から離脱できる時間だよね。そしてメンバーとその時間を共有できることは何事にも代え難いね。

ブルーズを50年近く聴いているけど、聴く感じが変わったというか昔は好きじゃなかったものが、これ、こんなによかったんだって。生きているうちに気が付いてよかったなって。 きっと自分の内面が変わって、精神的な変化があって、音楽を聴く気持ちも変わっていく部分がある。フォーク・ブルーズとかあまり聴かなかったけどね。レッドベリーとか。最近、すごくいいなと思って。

Bull-Doze Blues(b.t.bニューアルバム5曲目に収録)ってあるじゃん。今回、その曲を生ギターで録音したんだけど、ほんとにフォークみたいなの。ヘンリー・トーマスって戦前の人の曲で。昔から家でアルバムは聴いていたんだけど、そんなにいいとは思わなかった。なんかフォークだなと。ある日、ふとこれって(Bull-Doze Blues)どっかで聴いたことあるなって思っていたら、映画「ウッドストック」の一番最初のシーンで流れる曲だ、って。
キャンド・ヒートっていう白人のブルーズバンドの「Going up the Country」って曲だった。ヘンリー・トーマスの曲と曲名は違うけど、聴き比べてみたら同じで。調べてみたら、キャンド・ヒートはヘンリー・トーマスから取りましたって書いてあって。やっぱりそうなんだって。40年も経って今さら気がつくのか、俺はって(笑)ファイフという独特な笛みたいなイントロが入っているんだけど、キャンド・ヒートのイントロがほとんど同じフレーズだった。ファイフのフレーズ、b.t.bのアルバムではコテツくんがハーモニカで吹いてくれているんだけど、素晴らしい。こんなのみんなやってくれるかなと思ったら、メンバーは面白がってくれて。今までにない感じでできた。めちゃくちゃ古い弾き語りのブルーズ…… 1920年代のだけど、自分にとっては新しい。

-b.t.bは常に進化しているんですね。

進化しているかどうかはわからないけど、レコーディングの度に課題が出てくるからメンバー全員それぞれがそれをクリアしないと、みたいなのはある。

-ところで、毎年、全国をツアーしていらっしゃいますが、ジロキチをホームグラウンドにしていただいて……

みんなで言ってるけど、ジロキチは音がいいよね。まずそれが決定的なことだと思う。ワオさん(PAエンジニア)の存在もそうだし、店の造り、板張り、壁の感じの調和。ハコの造りもいいんだよね。地方の人に「ジロキチに聴きに来てよ」って、よく言うんだよ。

-おかげさまで全国からお客様が来てくれます。

何十年もやってて俺にしてみればジロキチの感じが当たり前になってるじゃない。例えばカウンターがあって食べ物が出て、飲み物が出て、演奏が終わったらちょっと飲んで話ししてというパターンがさ。これが実はなかなかないんだよね。普通のロック小屋だと終わったらギャラ精算してもらって「帰ろうか……」ハイおつかれさまでしたで終わる。ジロキチでは、終わったらミュージシャン同士で話したり、お客さんやスタッフと飲むっていうのがあるじゃない。それって楽しいし、大事なことだと思うんだよね。ジロキチだとそういうのがあたりまえだからね。音だけじゃなくて店の姿勢や形態も大事だと思う。ツアーでも比較的そういう店を探してやっている。終わったらスタッフと飲みにいったりすることもあるよ。そこで打上げが出来ないなら居酒屋に行ってそこでお店のスタッフとしゃべってみたいな。そういう感じだよね。

それにジロキチは楽屋があるっていうのがいいんだよね。楽屋がないところ、多いですよ結構。ここ(楽屋での)でのグダグダ感がいいんだよね。メンバーと本番前に話しが出来るっていうのは大事だと思う。だから全部含めてジロキチはいいねって。初めてやる曲はまずジロキチでやるからね。やってみてよかったら、この曲はレコーディングするか、って話しになったり。

-最後にアルバムの聴きどころを教えてください。

10年経って、8枚目になるんだけど、どうなんだろうね(笑)なんて言ったらいいかなぁ。 いいアルバムです、としか言いようがないね。本当にいいアルバムです(笑)うつみさんがゲストで来てくれたのもよかった。

-いいアルバムって一曲目の数小節でわかります。気迫というか。先日、ちょっと聴かせていただきましたが、ニューアルバムはまさにそうでした。音もいいしライブ感もあって、緊張感もあって。

初めてアコギで録音した曲が二曲あって、どうなんだろうと。自分で判断できないのね。エンジニアの内田くんやレコード会社の安藤さんに、いいじゃないですか、と言われると、ああいいのか、と思うんだけど(笑)でも10年やって来ただけのことはあると、それは感じるね。

今回、アルバムのジャケットは久原大河さん(イラストレーター)にお願いしました。久原さんが描いたジミヘンが七輪でさんま焼いてるの(笑)あれが最初かな、忘れられないな。すごく個性があってどこかあったかい感じがする絵。

10年経ったから、今回はジャケットもちょっと違う感じにしてみようかと。久原さんもノリノリで素晴らしい絵を描いてデザインしてくれたので期待してください。

-ジャケットも楽しみです。レコ発の二日間、大いに期待しています。ありがとうございました。

インタビュー/構成 金井貴弥  撮影/制作 高向美帆

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blues.the-butcher-590213 10th Anniversary Album『Rockin’ And Rollin’』
リリース記念ライヴ2Days @JIROKICHI
2017年6月1(木)2(金) 予約(♪3500)当日(♪4000)
永井ホトケ隆vo,g 沼澤尚dr 中條卓b KOTEZ(vo,harp) +うつみようこvo,g

blues.the-butcher-590213 『Rockin’And Rollin’』
ブルーズ・ザ・ブッチャー/ロッキン・アンド・ローリン
P-VINE 定価:¥2,778+税
Release Date: 2017.06.02
http://p-vine.jp/news/20170403-180000